仕事と作業 [回想録]
今はやっているのかどうかわかりませんが、東京鮨商組合で鮨の基本技術の統一などのために若い人たちを対象に技術講習なるものを以前やっておりました。
二週間に1回比較的鮨店の休みの多い火曜日か水曜日にありました。
一年ちょっとの期間だったと思います。
二十年ほど前僕も通っていました。
包丁の研ぎ方から米の炊き方、笹の切り方、オボロの炊き方、ガリの漬け方、もちろんそのほか鮨屋で扱う全ての魚の仕込み方、鮨の作り方、盛り込みまで全てやります。
鮨屋で行う仕事全てをやりましたので大変勉強になりました。
講師の方は組合の技術部の方で皆さんその腕には定評がある方でした。
その中に僕のとても印象に残っている方がいました。
巣鴨にあります「蛇の目寿司」というお鮨屋さんの経営者の山崎さんという方でした。
この方がまた怖い人でした。
毎回講師の方はスケジュールで変るのですが、山崎さんの時は皆緊張してました。
第一回目の時、忘れません。
白衣を着てならんだ僕らにいきなり激です。
白衣の着方がなってない。
我々は白衣を着て前掛けをするのですが、前掛けをした時背中に白衣のしわが寄ってはいけないというのです。
前掛けをする時は、腰の両横で白衣を折りたたんでしわが寄らないようにする事。
鮨屋はお客様の前で仕事をするのだから背中を見せることもあるのできちんとしていないといけないという事です。
後半になってにぎり鮨や巻き鮨の講習などもするようになるのですが、出来上がったお鮨を食べましょうという事になりました。
山崎さんが、おろした魚のアラがあるのでもったいないからそれでアラ汁を作ろうと言いました。
生徒の一人がアラを鍋に入れ水道の水を入れようと鍋に蛇口をひねるとまた激です。
「何やってんだ!ちゃんとお椀でここにいる人数分量ってやれ!目分量で余計に入れたって調味料もガスももったいないだろう!」
まったくもってその通りです。
山崎さんの授業は全てがこんな感じです。
みんなは怖がってましたが、僕は好きでした。
言う事がもっともだからです。
そんな中かなり始めの方で言われた事ですが今でも印象に残っている言葉があります。
それは
「何でも仕込が終わったものをしまったり、並べたりする時は必ず数を数える癖をつける事。ただ何も考えずに並べたりするのは仕事とは言わない、作業と言う」
つまり自分が作ったりしたものの数を把握しておけばその物の単価が計算できたり使いかたが計算できたり親方に聞かれてもすぐに在庫を答えられたりする事ができるというわけです。
その時本当思いました。
「いい仕事してますね」
なんて言葉ありますが、「いい仕事」どころか「仕事」すらになってない時あるんじゃないか。
なかなか「いい仕事」はできませんが、「仕事」はしたいという気持ちは持っていたいです。
読んでいて、私の職業に合通ずるものがあるなと、新人時代を思い出しました。(私の場合は現場に配属される前の全寮制訓練場の怖い教官を思い出しました。)
それこそ、服の皺やベルトのバックルの位置が数ミリずれているだけでも怒鳴られる世界です!
それにしても、お寿司屋さんにもそのような訓練講座(?)があるんですね!
我が子も寿司職人を夢見ているので参考になりました!
by MJTR (2011-07-14 08:43)