そうだよ!そのセンスだよ!素直な心。 [都寿司]
これ、なんだかわかりますか?
わかりますよね。
そうです、鮨屋で穴子なんかにつけるあのタレです。
我々は、「ツメ」と呼ぶのですが・・・
穴子などを煮た煮汁をこしてコトコトと時間をかけ煮詰めていって作るから「ツメ」。
これなんかもお店によって味が違うので楽しめるところです。
先日、お友達のMちゃん、愛息お二人を連れてお鮨を食べに来てくれました。
上のお兄ちゃん、小学校5年生。
弟君、幼稚園年長さん。
最近二人とも鮨は穴子がブームです。
連続穴子です。
この時も穴子。
お兄ちゃん、穴子。
弟君、穴子。
続いてまた二人とも穴子。
お兄ちゃんに出して、次に弟君に出そうと穴子にツメをtつけていると弟君が
「あの、ソースいっぱいつけてください」
「?」
ソース?
うまいっ!
長年鮨屋やってますが、ツメのことを「ソース」と呼ばれたのは初めてでした。
周りは大うけでしたが僕は真剣に
「すげぇぞ、うめぇぞ、なかなか考えてもいえねぇぞ。初めてだよ、ソースって呼んだのは。いいんだよ、ソース美味しいか。そう言ってもらえると、俺ぁうれしいよ」
そう言いました。
名前なんかどうでもいいんですよ。
子供の中では「あの美味しいソース」なんですよ。
大人だったら気取ったりわかったこと言ってしまいますが、その純粋な子供の気持ち、僕ら大人は持っていないです。
こんなこともありました。
やはり、お母さんと小学校上がったばかりの息子さん。
「ほら、食べたいものあったらちゃんと自分で頼みなさい」
とお母さん。
すると息子さん
「えっと、じゃあネギトロのネギ抜きください」
「・・・」
どっと沸きました。
大うけです。
「いやだぁ、あなた、それはトロ巻きでいいのよ」
お母さん。
「そんなこたぁねえよな。僕はトロ巻きじゃなくてネギトロのネギが入ってないやつが食べたいんだよな」
と僕。
ここまで来ると昔の職人の世界のセリフみたいです。
「美味しいもんは作れるが、旨ぇもんはなかなか作れねぇよ」
みたいな・・・
もうひとつ。
これはやはり小学生のお姉ちゃんと弟君の二人をお父さんが連れてきた時。
二人で何かこそこそ話してます。
「なにこそこそ話してるんだ?聞きたいことがあったらちゃんとお兄さんに聞きなさい」
とお父さん。
するとしばらく二人でどっちが聞くみたいな話をしていましたが、意を決しておねえちゃんが僕の方へ顔を上げました。
「あの、おすし屋さんは洋服もってるんですか?」
きたっ。
さすが、です。
普段から僕が白衣を着ているところしか見た事ないからでしょう。
こういうのも大好きです。
子供ならではの素直な心。
今度はこっちが試されます。
「当たり前でしょ。持ってるよ」
じゃ、芸がなさ過ぎです。
僕もその子供の世界に入りたいです。
「お父さんとかみんなお仕事している人はお休みがあるよね。ここのおすし屋さんは、火曜日がお休みなんだ。だから僕は毎日お鮨を作っているけれども火曜日はおすしを作るのをお休みするの。それでねお休みの日に何をするかといえば、僕は映画が好きだから映画を観に行くの。そのね、映画館に行くときに着ていく洋服をいくつか持ってるよ」
そう答えたのがまるで昨日のことのように憶えていて印象的です。
が、「ネギトロのネギ抜き」の男の子も、「洋服もっているのかな」の姉弟も皆さん今では社会に出て活躍している立派な方々です。
きっと「ソースたっぷり」の弟君もいずれ逞しい社会人になるのでしょう。
その僕らが忘れてしまう子供たちの素直な心。
その子供たちに
「おいしい」
と言ってもらったら、僕も素直に喜んで・・・いいんですよね?
我々もよく聞かれますね。
普段はどんな格好しているですか?って。
なので、
真っ赤なTシャツに、
パンタロンですと、答えるようにしています。
by 方丈安穏 (2012-11-20 07:52)
うまい!
さすが方丈氏。
ところで頭はそのままですか?
by usakichi (2012-11-20 17:43)
子供の純な感性って、大人になるにつれ「常識」に上書きされて いつの間にか無くなってしまいますよねぇ…。
逆に言えば、その上書きされることが
大人になるってことなのかな?
少し寂しいですね。
楽しく拝見させてもらいました(^-^)
by 力丸 剛(MJTR) (2013-08-20 09:35)